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大分地方裁判所 平成12年(行ク)2号 決定 2000年9月18日

主文

一  本件抗告を棄却する。

二  当審における抗告人らの新申立てを却下する。

三  抗告費用は抗告人らの負担とする。

事実及び理由

第三 当裁判所の判断

一  本件抗告事件の本案訴訟は、本匠村民である抗告人らが原告となり、本匠村長である相手方を被告として、地方自治法242条の2の1項1号又は4号に基づいて、<1> 本匠村統合中学校校舎設計業務委託料として支出した1995万についての損害賠償(4号請求)、<2> 本匠村統合中学校用地整備工事の前渡金として支出した1323万円についての損害賠償(4号請求)、<3> 本匠村統合中学校用地整備工事完成代金2億1831万6000円の支出差止め(1号請求)、<4> 本匠村の村有地を校地とする東九州設計工務株式会社の設計に基づく施工のための建築、機械設備、電気設備の各契約を締結し、請負代金を支出することの差止め(1号請求)、をそれぞれ求める住民訴訟である。

二  そして、抗告人らは、原審において、本案訴訟の実効性を保全するためと主張して、行政事件訴訟法25条2項に基づいて、「相手方が平成12年9月19日になさんとする本匠中学校(本匠村統合中学校)校舎新築工事及び同機械設備工事並びに同電気設備工事の請負仮契約の締結を目的とする指名競争入札の実施を停止する。」旨の決定を求めた。

これに対して、原審は、右指名競争入札の1日前の平成12年9月18日、本案訴訟は、処分又は裁決の取消しを求めるもの若しくは無効確認を求めるもの以外の民衆訴訟(行政事件訴訟法43条3項)に該当するところ、このような民衆訴訟については、行政事件訴訟法25条は準用されておらず、かかる訴訟を本案として執行停止の申立てをすることはできないとして、抗告人らの右申立てを不適法であるとして却下した。

三  しかるところ、抗告人らは、右指名競争入札が実施された後に、原決定を不当とし、当審で新たに別紙契約目録(三)に記載された本匠村統合中学校の校舎新築工事、校舎機械設備工事、校舎電気設備工事についての契約締結、請負代金の支出等の停止を求める趣旨と解される新たな申立てを行ったものであるが、いずれにせよ、当裁判所も、抗告人らの原審及び当審でなした申立ては不適法であって、却下を免れないと判断する。すなわち、

住民訴訟は、地方自治法によって創設された民衆訴訟(客観的な法秩序、法規の適正な運用を目的とし、自己の法律上の利益にかかわらない資格で提起されるもの)の一種であるところ、地方自治法は、住民訴訟に関して独自の仮の救済制度を設けておらず、単に、同法242条の2第6項が、住民訴訟に対して行政事件訴訟法43条の適用があるものと規定するにとどまっている。そして、行政事件訴訟法43条によれば、住民訴訟のうち2号請求(行政処分たる当該行為の取消し又は無効確認の請求)については、行政事件訴訟法における取消訴訟に関する規定又は無効等確認の訴えに対する規定が準用され、したがって、執行停止に関する行政事件訴訟法25条の規定の準用があるが、1号請求、3号請求及び4号請求に対しては、執行停止に関する行政事件訴訟法25条は準用されないことになる。

よって、地方自治法242条の2の1項1号又は4号に基づく、損害賠償又は差止めを本案として、執行停止を求める抗告人らの各申立ては、いずれも不適法といわざるを得ない。

なお、抗告人らが引用する東京高等裁判所昭和53年9月18日の決定(判例時報907号61頁)は、建物工事差止の仮処分申請についての事案(「日比谷公園の利用者が、同公園に近接する敷地に同公園の現況を害するような高層ビルの建設を計画している者を相手方として、右公園の管理者たる東京都に代位して妨害排除を求める地方自治法242条の2第1項4号後段請求訴訟の提起を準備中であるとし、右訴訟を本案として右ビルの13階以上の部分の建築工事の差止を求める仮処分を申請した場合に、住民監査請求前置要件を具備した場合には右仮処分申請をなしうるとした事案。ただし、住民訴訟提起前に仮処分申請をなしうる要件についての疎明もないとして仮処分の申請は却下された。」)であって、行政事件訴訟法25条の執行停止に関する事案でもなく、本件に適切でないことは明らかである。

第四 結論

以上のとおり、原決定は相当であるし、抗告人らが当審においてなした新たな申立ても不適法であるから、本件抗告を棄却し、また、当審における新申立ても却下することとして、主文のとおり決定する。

(裁判長裁判官 川畑耕平 裁判官 岸和田羊一 白石哲)

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